我が家の前には小さな公園があります。私の父が公園用地取得に尽力し、公園ができてからは毎日多くの子どもたちが賑やかに遊び、お年寄りが夕涼みをする小さな地域の大切な空間です。うちの子どもたちも,そこでさまざまな年齢の子どもと遊びながら育ちました。主人、近藤浩は、休日に時間がとれれば、その公園で自分の子どもたちを見守りながら、よそのお子さんに自転車の乗り方を教えたりしていました。
危険な違法駐車を取り締まるため、駐車違反の看板も立てていただきました。町会でも、PTAでもパトロールをして防犯に備えていました。ご近所でも声をかけ合い、助け合って暮らしてきました。その中心に我が家、近藤家はありました。
その公園の前に、昨年11月２4日、血も涙もない５人の若者がやってきて、主人に暴行し、誘拐し、殺し、私たちの生活すべてを壊したのです。
主人の拉致犯行現場は我が家の真ん前、子どもと主人の笑顔の思い出に溢れる場所でした。
事件に違いないと警察が捜査を始めた11月27日から、我が家には刑事さんが張り込み、電話には逆探知機がつけられました。また、ご近所一軒一軒に警察官による聞き込みが始まりました。誘拐事件を想定し、主人の命を気遣い、「近藤さんのご主人が行方不明なのです」とは言えません。仕方なく、「強盗団がいるので、喧嘩があったようで・・・」と言いながらの聞き込みでした。
「何かあったのですか？」とご近所に尋ねられても、まさか主人が行方不明とは言えず「前の道で夜中にけんかがあったみたいです。でも大丈夫だから」と私が皆さんをなだめて来ました。どんな気持ちだったかわかりますか？突然主人が行方不明になったのに地域の皆さんを不安にはさせられない、迷惑はかけられないのです。
警察は地道な調査を積み重ね、本当によく犯人全員を逮捕してくれました。そして、主犯酒井の供述から、近藤浩は山中に埋められたことが判明しました。
12月24日主人は遺体で見つかりました。子どもたちの楽しみにしているクリスマスイブです。いつもなら、お父さんとクリスマスケーキを奪い合って食べ、プレゼントをもらえる日に「父の死」という知らせが届いたのです。警察からの電話を受け、子どもたちに「お父さん死んじゃった」と言うと、１０歳の息子は「ぼく、お父さんが死んだことは、友達に話しても大丈夫かな」と言いました。１ヶ月間、お父さんがいなくなったことを誰にも話せず、どんなに小さな胸を痛めて、辛い思いをしてきたことか、涙が出てとまりませんでした。あなたたち殺人鬼には、こういう心の痛みは理解できないのでしょうね。
酒井被告、坂本被告、高橋被告、あなたたちは、警察に逮捕されるまでのこの１ヶ月間何をしていたのですか。何食わぬ顔で、殺人がバレる事はないと思って、普通に暮らしていたのですね。酒井被告は、自分にはアリバイがあるから大丈夫だと考え、坂本被告は酒井からもらった報酬でパソコンを買い、自営の会社の資産を増やし、高橋被告は、自分が拉致して殺した主人の財布から抜きとった金を車のガソリン代に使い、相変わらず坂本被告に従って動いていたのですね。誰一人「大変なことをしてしまった」と自首するでもなく、近藤浩が苦しんで苦しんでうめきながら死んで行った、その部屋で笑いながら過ごしていたのですね。
この裁判をすべて傍聴してみて、酒井被告、坂本被告、高橋被告誰一人、「近藤浩を殺して悪い事をした」と思っていないことに私は愕然としました。
酒井被告は、今でも「近藤を片付けてよかった」と心から思っているのではないでしょうか。あなたの薄笑いを浮かべた表情を見ていると私にはそう思えます。
坂本被告、高橋被告は、自分たちが主人を殺した実行犯でありながら、子どもたちでもわかる、人を暴力で連れ去り、監禁し、殺した、人間として決して許されない行為に対して、「頼まれたから」「危ないと思ったけど断れなくて」「酒井に渡してしまえば済むことで、自分たちはたいした罪ではないと考えた」とのんきなことを平気で言って全く反省の様子がないのです。
主人を返してください。主人が大事にしていた身の回りの物を返してください。私たちの生活、私たちの幸せの全てを返してください。
１１月２４日以前の生活を、私たちに戻してください。
酒井被告は、主人、近藤浩が「商社で大きな仕事がしたい」と夢を膨らませてニチメン㈱に入社した頃から、彼の上司でした。近藤浩は上司酒井を「頭の切れる人だ」と評価していました。まさか、自分がその上司に殺される運命になるとはつゆ知らず。なぜ、夫は、あなたに、殺されなくてはならなかったのですか。与えられた会社の仕事をただ黙々と正義感を持って、真面目に取り組んでいた主人が、なぜ、こんなむごい目に遭わなければならなかったのですか。
酒井被告は、近藤浩が自分と同じような性格であると考え、粉飾決算、ケトの商権持ち逃げと、自分がしてきた不祥事の後、会社に残った近藤にあれだけ苦労をさせたので彼が自分を憎んでいるだろう、もし、自分が近藤の立場だったら、とことん元上司を恨むだろうと考えたのですね。主人もあなたのような、利己的で、他人に対して憎しみやねたみしか持たない人間だと考えたのですね。
主人は、あなたと全く違う人間でした。まさに正反対の人間でした。近藤浩は誰にも優しく、いつも真面目で、正義感に溢れ、勉強家で、本当に努力の人でした。
ニチメン原動機時代、主人はケトの商売がとても儲かることを何度か口にしていました。そして、自分はどんなに身を粉にして働いて、機械を売っても給料が上がるわけでもなく、ちょっとさみしいようなことを言っていたのを聞いたことがあります。それを見越して、利己的な酒井は多くの人に、迷惑をかけても自分が儲けるためにケトの商権を持ち逃げして自分の会社を立ち上げたのです。酒井は忠実に働いた自分の部下に迷惑をかけようが、ケト社を騙そうが、社員がリストラされようが、お客さんの経営が成り立たなくなって自殺しようが、全く我関せずでした。そしてそれらの始末はすべて主人にまわってきました。それでも主人は、「大変な人がたくさんいるのだから」と自分のできるだけの誠意をもって仕事を片付けていきました。そして、自分をそんな立場に追い込んだ酒井を恨むでもなく、「こんなことがなかったら、ぼくは仕事をもっと気楽なものと考えていたかもしれない。会計の事、負債の事、リストラの事、知っていなくてはいけないことをたくさん勉強した」と言っていました。
酒井には分らないのです。一生懸命働くと言うことが。人の上前をはねる生き方ばかりしてきた酒井は、人間が頑張った時に、そこから生まれる達成感や充実感、そんな思いをしたことがない人間なのです。
いつも金さえ与えれば、どんなことでも動くような弱い人間にめざとく目をつけて、部下として使い、関係が上手くいかなくなると喧嘩分かれしたり、平気で切り捨てたりする酒井のような人間には、自分の仕事が、世の中が、多くの人間の力で回っていることがわからないのです。今回の坂本被告もまさに、そうして酒井に使われた弱い人間です。
主人の１番の魅力は、自分と関わった人、真面目に取り組む人、努力をしてがんばっている人を決して裏切らない、その人以上に自分が努力をして必ず応えてあげる、その生き方でした。
地方の営業所で主人と一緒に働いた方、お客さん、独立されたかつての同僚、本当に多くの方が近藤浩の死を悼んでくださいました。そして、一人残らず、「本当に一生懸命働いていらっしゃいました」と主人の働きぶりを讃えてくださいます。会社のために、リストラされた仲間の為に、自分が心をこめて売ったお客さんのために、また私たち家族のために、主人は文句も言わず、ひたすら厳しい仕事を続けていたのです。
ニチメン㈱が酒井を訴える裁判をすることを決めた時、主人は、「当時関わっていた人が皆辞めて自分しか真相がわからないのだから」と言って、真剣に任務に取り組みました。私は、鈴木光氏から酒井の話（「酒井は本当に汚い」という内容）を聞いていたこともあり「酒井相手は危なくないの？」と一度だけ聞いた事があります。その時、主人は「会社がきちんと法律にのっとって裁判を進めるのだから、何も問題ないよ」と言いました。主人は、酒井には、大手商社ニチメン㈱の社員であったプライドがどこかにまだあると信じていたと思います。
元ニチメン㈱、現在双日㈱の弁護士さんが、酒井が代表者であるケト・ジャパン相手の民事裁判を進めるにあたり、「この情報と、この情報が欲しいから、調べて欲しい」と事務担当である近藤浩に依頼すると、「依頼された内容の、１はこう、２はこう、３は今調べ中です」と、すぐに主人から調査結果の連絡があり、「近藤さんはとても真面目で、正義感が強く、仕事がやりやすかった」と話されていました。双日㈱には法務部もあり、当然のことながら、裁判は、弁護士さんが会社の意向を持って、きちんと進めていたのです。事実、近藤浩亡き後、双日㈱はケト・ジャパン相手の裁判を続け、民事裁判は結審しました。
一方、酒井被告は、自分の形勢が悪くなると、代議士の秘書に横やりを入れさせようとしたり、自分の知り合いの双日㈱社員に根回しを頼んだりしたそうですね。酒井自身が法の解釈を曲げ、裁判を引き延ばし、その原因が近藤浩にあると勝手に判断し、近藤浩を抹殺しようと考える。真面目に、会社から割り当てられた仕事に取り組んでいた主人が、いったいあなたに何をしたというのですか？
双日㈱の民事裁判は、和解成立にむけて進んでいました。まさに、和解調停が決まる１２月２４日、酒井が近藤浩を殺したことを、双日㈱の弁護士さんも、酒井被告の弁護士さんも、この裁判所のテレビ放映で知ったそうです。「こんな失礼なことはない」と双日㈱の弁護士さんは怒りをあらわにされていました。
早稲田の法学部を卒業された酒井被告、あなたの学友の中には、ここにいらっしゃる裁判官や検事や弁護士さんのようなお仕事をされている方もいらっしゃるのではないのですか。
法律の解釈を自分勝手にねじ曲げ、商権持ち逃げは大した事ではないと言いはり、悪事を働いた自分に裁判が有利になることだけ考え、裁判中の事務担当者に直接電話をして「裁判中だから会えない」と話合いを断られると、腹を立て、相手を殺そうと考えるなんて、法学部の出身者を冒涜していませんか。
この刑事裁判が始まる直前の２月２６日、あなた方殺人犯の親族が謝罪のためと言って我が家を訪れました。もちろん全員、主人も私も知らない人ばかりです。主人が頑張って働いてようやく建てた我が家に、殺人者の家族を上げる事はできません。お焼香もお断りし、主人が拉致された家の前の北風の吹き付ける公園で会いました。
酒井被告の奥さんと弟さんも、２人の弁護士さんに守られながらいらっしゃいました。その時、酒井被告の奥さんは「うちも、もう、主人はいないも同じで」と言われました。私の父は「ダンナが捕まったら関係ないと逃げるのか！」と声を荒げました。彼女は何をしにきたのでしょうか？自分のご主人の行いを謝るために来たのではないのでしょうか？謝罪の気持ちを持っていることが全く感じられませんでした。
双日の商権裁判で、酒井被告は、人殺しをしてでも、奥さんと子どもの生活を守りたかったのですよね。民事裁判の賠償金が払えず、自己破産して、マンションを取り上げられると、自分の家族が困るから、そのために、近藤浩を殺したのですね。自分の幸せだけが大事で、他所の家族の生活は、上手くいっていればねたみこそすれ、どうなっても関係ないものだったのですね。
酒井被告のお子さんは、たまたま、うちの長女と同じ歳だと伺ったことがあります。自分の子どもと同じ歳の子どもから、愛する父親を奪っても、全く平気なのですね。
うちの長女は言います。「酒井の子どもはいいよね。刑務所に入ったって、そこへ行けばお父さんに会えるんでしょ。手を握る事もできるんでしょう。私には手を握ってくれるお父さんはもういなくなっちゃったのに。酒井の子どもは幸せだよね」
酒井被告が、近藤浩を殺してでも守りたかった家族は、どうしたのでしょう。裁判では一度もお見受けしませんでした。情状の弁論にも出ていらっしゃらなかったのですね。
酒井被告の弟さんも、１月に、私宛に手紙をくださいました。「民事裁判のことを自分が知っていたら、なんとかできたかもしれなかった」とそこに書いてありました。もし弟さんが、お兄さんがお金に困っていることを知っていたら、この殺人が防げたという内容にとれました。その弟さんも裁判では一度もお見受けしません。そして、近藤浩が拉致され、ぐるぐる巻きにされ、布団袋に入れられ、その上から布団を巻かれ、苦しんで、苦しんで死んで行った、荻窪の家、当時坂本被告が住んでいた酒井被告のお父さんの家をさっさと売り払われたと伺いました。
夫を、近藤浩を殺してでも、守って行きたかった酒井被告のかけがえのないご家族みなさんで、これから協力して、夫が命をかけることになってしまった双日㈱の裁判判決どおり会社に賠償金を支払い、近藤浩にもきちんと謝り償ってください。
自分の虚栄心を満たすためだけに近藤浩を殺し、何の関係もない若者５人の人生を葬った酒井被告に許される道はありません。死んで、近藤浩に謝ってください。
坂本被告、高橋被告、あなたたちはいいですよね。こんなに大人になっても。息子の不祥事に駆けつけ、泣いてくれる父親がいる。うちの長男は１０歳であなたたちに父親を奪われました。これから長男に何が起こっても、叱ったり、泣いたりしてくれる父親はいないのです。
長男に「お父さんを殺した犯人たちは逮捕されて刑務所に入るんだよ」と話したとき、彼は「それ、どういうこと？お父さんみたいに火で焼かれちゃうってこと？」と言いました。できることなら本当に、そうしてもらいたい。近藤浩はあなたたちの顔も名前も知らずに死んで行ったのです。無念さを伝えたくても、誰を恨んでよいのかわかりません。「あなたを殺したのは僕たちです」と名乗り出て、向こうで近藤浩にひれ伏して謝ってもらいたい。
坂本被告は、それほど親しかったわけでもない親戚の「おじさんが」「痴漢事件をでっちあげる」と言えば、「はい、わかりました」次に「殺して山に埋める」と言えば「はい、やってみます」と言う、金のためならどんなことでもする「何でも屋」です。近藤浩が、あなたの暮らしていた家で死に、酒井被告に遺体を渡したすぐ後、酒井被告から成功報酬を受け取ったのですよね。そして、その金ですぐパソコンを買ったのですね。人を殺した報酬で、よく日常的に使うパソコンなどが買えますね。自分の仕事が終わり報酬をもらったら、近藤浩が死んだことなど、思い出しもしなかったのでしょうか。あなたの暮らしていたリビングで、近藤浩は苦しみ、苦しみ、うめきながら死んで行ったのです。それでも、終わってしまえば自分にとって関係ない事、坂本被告はそのリビングで普通に生活し、近藤浩をぐるぐる巻きにしてレンタカーから載せ換えた、自分の車をその後も普通に運転していたのです。
酒井被告に使われたと言っても、坂本被告も酒井と同じです。自分自身は直接手を出さず、金で部下を雇い、彼らに命令を下し、後は自己保身だけを、逃げる事だけを考える。
坂本被告、主人を直接殺したのはあなたです。酒井を断ることはいくらでもできたはずです。酒井の指令が変更になり、来ないとわかった夜中に主人を解放することだってできたはずです。この拉致、監禁の間中、すべてを動かしていたのは坂本あなた１人だったのですから、あなたの意志で主人を殺したのですから。それなのに「親戚のおじさんに断れなかった」など大嘘です。全く身勝手な保身です。
坂本被告は自分がこの事件に誘い込んだ高橋や沢田に対しては「悪い事をした」と少し反省しているようですが、もともとあかの他人だった近藤浩に対しては苦しもうが、死のうが、その家族がどんな辛い思いをしようが、関係ないのです。
坂本被告のご両親も２月２６日、我が家に「謝罪」にいらっしゃいました。ご両親はあなたたちが主人を拉致したちょうどその路上で、泣いて土下座をされました。殺人者となった息子を「いい子だったんです」と言って泣き崩れ、そして自分たちが出来る限りの償いをしたいと、申し出ていらっしゃいます。６人の犯罪者の家族の中では一番まともな方々と見受けられます。けれど、なぜ、他人の命も大事であることを息子に教えなかったのでしょうか？裁判を通じても、どこまでも息子に甘い親の態度が伺えます。そんなあなたたちに育てられた息子は何もできない、何も考えられない赤ん坊のようです。
その息子はお金をもらって殺人の仕事をすることを、自分の意思で選んだのです。その報酬を手に、喜んでパソコンを買いに行ったのです。人間の命の大切さを考える頭など持ち合わせていないのです。「痴漢仕立て上げ」２０万、「殺人」１００万と出された条件に対し、自分で判断し、助手を調達して、近藤浩を亡き者にすることを仕事としたのです。主人を殺した後も、殺人が自分の予想以上に大変だったので、もっと酒井から金をもらわなくては「割が合わない」と考えていたのですよね。
親は息子に人間の命の尊さやお金の感覚を教えなかったのですか。映像関係だか何だか知りませんが、こんな基本的な感覚も持たない人間に事業ができるなどとは、誰も思いません。もし、刑務所から出て来て仕事がなかったら、こんな危険な感覚を持った人間は、また、「何でも屋」を繰り返します。私は坂本被告を決して許しません。二度と世の中に出て来てほしくありません。
高橋被告は、大学まで出ていながら、全く頭の中のからっぽな人間です。何一つ自分で考えられない、何一つ自分で決められない。坂本被告の言う事は、それが犯罪だとわかっていても反対もせず、「金になることならやってみる」と決めたのですね。「痴漢でっちあげ」から近藤浩を尾行する仕事を続け、殺人が行われると理解しながら、「自分は尾行だけだから罪はない」「拉致するとき手を出さなければ罪はない」と自分に言い聞かせていたのですね。近藤浩に対し「あなたは酒井に狙われています」と声をかける機会は何度もあったのに。
結局、高橋被告は「自分だけ手をださない」と考えていたにもかかわらず、坂本被告の指示で、近藤浩に一番暴行を加え、荻窪の家のリビングで、夫が苦しんで苦しんで死んで行った時、ただ一人そばにいる人間になったのですね。主人が顔全体をガムテープでぐるぐる巻きにされ、鼻の穴だけがわずかに出ている状態で、苦しそうに息をしている時、高橋被告は「このままでは鼻が詰まったら死んでしまう」と理解していたのですよね。そして、「どうせ殺す事は決まってるのだから、放っておこう」と決めたのですね。「大変なことになった」と坂本被告を呼びに行った時、主人はどんな様子だったのですか。
他の致死罪の３人の若者、沢田被告、緒方被告、齋藤被告の公判の中で、「高橋の顔つきが変わり、彼が一番恐ろしかった」という証言がありました。高橋被告は内面的にそういう狂気なものを持ち合わせているのだと思います。狂気を持つ頭の中身のない人間ほど危険な人間はいません。
「痴漢でっち上げ事件」は被害者役となる女性に断られ断念したと聞きました。どういう女性かは知りませんが、なんと勇気のある行動でしょう。高橋被告にはそれができなかった。なぜですか。金欲しさに、人間の命を奪う計画に加担し、自分だけ逃げおおせると思う。身勝手で利己的な大犯罪者です。
高橋被告のお父さんは、「自分の仕事が忙しく、ほとんど息子と話をしなかった」とおっしゃいました。夫、近藤浩も、おそらくあなた以上に忙しく真面目に働いていました。酒井被告による粉飾決算、商権持ち逃げにより、社員をリストラし、事業所を閉じなくてはならない仕事をさせられた時など、林業機器を扱っている彼の現場は、ほとんど山の中ですから、朝４時に起きて車で出かけ、夜中に帰って来ました。ケト社との交渉に行くのも、フィンランドまで機内１泊の２日で出かけました。あなたの息子に尾行され、拉致され、殺される前日「勤労感謝の日」にも、韓国で商談をまとめ、夜中に帰宅しました。忙しくて、忙しくて、子どもと遊ぶ時間はほとんどありませんでした。それでも、帰宅したお父さんの背中を二人の子どもは取り合いました。「お父さんが一番好き」子どもたちはいつもそう言っていました。どんなに忙しくても、子どもと対するときは、まっすぐ愛情を惜しみなく注ぐ人でした。
高橋被告のような若者は、今の日本に大勢います。万が一彼の罪が軽いと知ったら、少年たち皆がまねします。「数人で一人に暴力を加えたけれど、ぼくは指示されてやっただけだから罪は軽いさ」「生きている人間をポリバケツに入れて運べるかどうかやってみようか」「金貰って殺人に加わったけれど、自分が直接手を出さなければ大丈夫」「死んでいても、知らなかったと言えば罪が軽くなる」そんな次の若者たちを排出しないためにも、高橋被告を二度と社会に戻さないで欲しいと思います。
主人は優しい人でした。
道で歩けなくなって、しゃがみ込んでいたおばあさんを、自分の背中に背負って彼女の自宅まで連れて行ってあげて、感謝される人でした。
どんなに自分が忙しくても、「家事、子育て、介護、それに仕事を一人でこなしている小枝ちゃんが一番大変だよ」と私を労ってくれる人でした。
主人は本当に一生懸命働きました。
主人の会社双日マシナリー㈱の同僚や上司の方々、そしてかつての同僚で一緒に仕事をされた方が、この裁判のために、主人のことを書いてくださいました。抜粋して読ませていただきます。
・近藤さんは、１０年以上ケト・ハーベスタに取り組んで来られた第一人者です。林業界で「ニチメンの近藤」と言えば、日本中で「あの近藤か」と言われるほど名前が通っていました。ケト社の社長とも、大変親しくしていましたので、会社が民事訴訟の担当に抜擢したのだと思います。そのために殺害されてしまうなどあまりにひどすぎます。近藤さんは、これから日本の林業界に新風を吹きまれるような仕事をされただろうと思うと、悔しくて、悔しくて、なりません。
・ 近藤さんは本当に、心優しい温かい人でした。近藤さんが「歩く事が好きだ」と言っているのを聞いた事があります。「一歩一歩大地を踏みしめ振り返ると大きな仕事を成し遂げている」そんな近藤さんの姿が今でも目に浮かびます。近藤さんの無念さは幾ばくかと思うと、決して犯人を許す事はできません。
・ 近藤さんは実の兄貴のような存在でした。間違ったことをすると厳しく注意してくれたし、よい事をした時には自分のことのように喜んで褒めてくれました。近藤さんを返して欲しいです。
・ 自分の同僚がこのような事件に巻き込まれるなどということは未だに信じられません。犯人は何で償っても償いきれるものではありません。家族の幸せを失わせるということはこれ以上の罪はないと思います。
・ 近藤氏は仕事熱心で、朝早く出勤され、休日も度々出勤され、将来が非常に有望な人材と思っておりました。その近藤さんが、仕事上でこんなことになり、本当に残念です。
・ 林業のお客さんの中には気性の荒い人もいますが、近藤さんは粘り強く営業していました。だからこそ近藤さんに対するお客さんの信頼は厚かったです。「近藤さんじゃないと話にならない」というお客さんもいたくらいです。今でもお客さんは「なんで、あんないい人が・・」と電話で絶句され、その都度涙が止まりません。
・ 近藤課長は、素朴で実直な好人物で、人に好かれこそすれ、嫌われることのない人物だっただけに、主犯の酒井は絶対に許せない。極刑(きょっけい)に値すると思う。
双日マシナリー㈱の皆さん、仕事仲間のみなさん、ありがとうございました。あなた方と一緒に仕事ができて、主人は本当に幸せだったと思います。
酒井被告、坂本被告、高橋被告、そして坂本被告が雇った３人の若者によって、主人の商社マンとしての夢は志半ばで壊されました。
主人は貿易の仕事が好きでした。外国に行き、日本の地方に行き、そこで暮らす人たちを自分の力で結び付けたい、世界はひとつで、人間は皆同じであること、がんばる皆の可能性は大きいことを伝えたい、といつも言っていました。
「生まれ変わっても商社マンになるんだ」と彼はいつも言っていました。
主人は、林業の現場で汗水流して働くことが好きでした。山を愛し、仕事を愛する山の男たちと一緒に仕事をするのが好きでした。「あの会社の社長は中学しか出ていないのに、本当に仕事ができる人だよ。ああいうのが本当に仕事のプロって言うんだよ。僕ももっと勉強しなくちゃ」と素敵な現場の人たちの話をしていました。仕事のプロになる手前で、彼の人生はブツッと音をたてて断たれてしまいました。
昨年、子どもと山の木に仕掛けたカブトムシの仕掛けをこの夏、一緒にとりに行くのを楽しみにしていました。主人のこんなささやかな子どもとの時間もかなわなくなりました。
ずっと休むことなく働いてきたから、子どもたちがもう少し大きくなったら、主人と２人で映画を見たり、旅行に行ったり、自分たちのために時間を使おう。と言っていた夫婦の夢もなくなりました。
酒井被告、坂本被告、高橋被告に主人を殺され、私たちの家族は全てを失いました。家族の幸せ、家族の夢、これまでご近所と長い時間かけて築いてきた安心で住みやすい町、何もかもを失ってしまいました。
全てを無くしてしまった私たち家族が、今回、新しく得た物が、ひとつあります。それは心から犯人たちを憎む気持ちです。家族誰もが、生まれて初めて抱いた、この、人を憎む気持ちを、心の底から人間を憎いと思う気持ちを、どのように扱って良いかわからず、家族、皆が、苦しくて、苦しくて、息が詰まる思いをしています。
裁判長様、並びに２名の裁判官様。
自分たちの残忍で利己的な思いを達成するために、何も悪い事をしていない近藤浩の大切な人生を奪い、私たち家族のすべての夢を奪い、夫の実家の家族に壮絶な苦しみを与えた酒井、坂本、高橋を絶対に許さないでください。
万が一この罪が軽い罪として許されてしまったら、主人のように会社の指示による裁判の仕事に従事する人間は、いつ相手に恨まれて殺されてしまうか怖くて、仕事ができません。これでは法にのっとった裁判制度が成り立たなくなってしまいます。また、小額の報酬で、アルバイトで殺人を請け負う「普通に見える」若者を、どんどん増殖させてしまうことになります。
この事件は大変多くの方が見守っています。殺人を頼んだ方も、頼まれた方も重罪だと皆話しています。決して許されることのない殺人だと誰もが言います。
多くの若者に仕事がない状況なのですから、若者は手軽なアルバイトとして殺人を選んでしまう所にまで、今の社会が来ているのです。アルバイトで殺人をすることは絶対に許さないということを断固示す刑罰をお願いいたします。
この事件を見守っている多くの子どもたちに伝えたい。「人の命は何よりも大事です。頼まれたからやった、よく分らなかったからやった、では済まないのです。命を大事に考えない人間には、必ず大きな罰が待っているから、自分勝手な酒井、坂本、高橋は最高に重い罪になりました。だから、安心して真面目にしっかり勉強するのよ。きっと大人たちがいい社会を作っていくから」と言ってあげられるように、法の許す限りの重刑に処してください。お願いいたします。
主人、近藤浩は「こつこつ努力する人間が、最終的には幸せになれるんだ」といつも子どもたちに話して聞かせていました。主人は間違っていないということを、子どもたちに、この判決で見せてください。子どもたちが大人を信じて、地道に努力していける社会を築いていくために。心からお願いいたします。ありがとうございました。
|
| このページはブラウザーで閉じてください |
|